羽田野直子です。
卒業シーズンが近づいてきました。
週に一度教えに行っている映画学校の授業も先週無事に終えました。
でもいつもこの時期になると考えてしまいます。
私はちゃんと彼らに何かを伝えられたのか?と。


2年生にはまだ来年度がありますが、3年生はもう卒業です。
最後の授業のあと、何人かの学生がよってきました。
「先生、僕・・正直言って不安です」
「先生の舎弟にしてください(馬鹿者!私は親分さんではない。それを言うなら書生だろうが!—舎弟ってもともとその筋の言葉ではなく、実の弟のことを指すのに)」
映画の専門学校を選んだ時点で彼らはいわゆる「潰しが効かない」レールを選ぶという覚悟をしたはずです。
だからこそ、大学の文系学部で何のモティベーションもないから勉強をせず、本も読まず、タラーっと過ごしているそこら辺の学生たち(例外の人たち、ごめんなさい!)とは違って、3年という限られた時間を一生懸命駆け抜けてきたのです。
自分のや友達の映画を撮るために奔走し、睡眠不足のゆらゆらする頭で私の小難しい映画論に必死で食らいつき、半徹夜で書いたシナリオを酷評されてもまためげずに書き直して持ってきました。

 

でも・・・でも、社会に出るとなるとそれは大変です。
この不況下で映像関係の求人も少なくなっているのが現実なのです。
どこでも良ければそれなりの職場はあるでしょう。
けれど、ものを創りたいと思っている人間たちですから少なからずこだわりもあります。
それで卒業式を目前にまだ就職を決めかねている子が何人かいるのです。
あらかじめフリーでやっていくという決意の子もいます。

 

そんな中明るいニュースがありました。
私のクラスの子(3年生)がラジオ日本の「カフェラテ」(私の所属する日本放送作家協会が制作協力しています。パーソナリティーはカクシゴトヤの仲間さらだたまこさん)という番組内のラジオドラマコーナー「カフェラテ・ドラマファクトリー」の公募に見事選ばれたというのです。
学生たちにはいい機会だからと応募を勧めて、多分5人くらい出せたと聞いてはいましたが、審査の公正を保つために私は審査の場を離れましたし、知らせを聞いたときはほんとうにうれしかった。
それは本人にも!もちろん大いなる喜びでしたし、同級生や下級生には刺激になりました。
大きな目標に向かう前にいくつか小さな目標の達成って必要でしょう?
そのお蔭で最後の授業は活気づきました。
採用された作品に関して、オンエアに向けて脚本のさらなるブラッシュアップの相談を受けたので、ちょうどいい機会だからと、みんなの前でアドバイスしたら、本人じゃない学生に「うわあーっ先生、プロって感じがする!」と真面目な顔で言われました。
「それじゃなあにぃ、いままでは甘かったってことぉ!?」
「いや、そういうわけではないけど先生僕らを全否定ってことなかったし、基本認めるところから始まってたっていうか・・・でも、いまはびしっと・・・」
「・・・(何だか全員ニヤニヤ笑っていて私のほうが子どもみたいに思えてきました)」
クリエイティヴなことを教える人は応援者であるべきだと少なくとも私は思っています。
きびしい現実には否が応でも彼らがひとり、ひとりで直面するものですから。
それがちょっとわかってもらえていたのなら良しとするか・・・とちょっと救われたような、妙におだやかな心持ちになったのでした。

 

「夢はかなえてこそ」と言います。
みんな、頑張れ!