羽田野直子です。
すみだトリフォニーというコンサートホールに清水靖晃さん+サキソフォネッツによるバッハのゴールトベルク変奏曲を聴きに行って来ました。
総武線錦糸町駅前の再開発の一角に新日本フィルの拠点として墨田区が作った施設です。

 

駅を出て最初に目に飛び込んで来たのは東京のあちこちでチェーン展開している飲食店の看板のオンパレードでした。
あぁ、ここもかぁ・・・とがっかりしてしまいます。
どこかで見たことのある風景だと思ったら、北千住駅前のシアター1010(こちらは足立区の施設)の入っている丸井とルミネを中心とした駅前再開発とよく似ているのでした。

 

私は下町の風情が好きです。
根津や神楽坂のような町をぶらぶら歩くのも好き。
せっかく下町なのに、こうなる前はきっと錦糸町らしさがそこかしこにあったはずなのに、なぜ渋谷や新宿の真似をするのでしょうか?
地元の人たちからすると、身近で都心と同じものが手に入ることってやはり重要だからでしょうか?

 

でもそうした「のっぺらぼうの町作り」はつまらない。

 

最近どこの地方都市へ行っても空港から市内へ向かう国道沿いが判で押したように同じです。
紳士服の大型店、ファストフードのドライブスルー、郊外型の本屋さんにドラッグストア・・・いまどこの県にいるのかさっぱりわからなくなる、そののっぺらぼうぶりには目を覆いたくなるほどです。

 

もちろん生活者の立場からすると、広い駐車場があって豊富な品揃えのお店は便利だし、たまにしか来ない旅人の目線で勝手なノスタルジーに浸った意見など聞きたくない!といわれればそれまでなのですが。

 

それでは、話を観光地に限定いたしましょうか。
観光客が泊まりたい憧れの温泉地の上位に挙げられる由布院はどうでしょうか?
由布院はその昔、鄙びた田舎の湯治場でした。
町の未来像を模索していた若者ふたり(由布院名旅館の御三家に称せられる、玉の湯の溝口薫平氏と亀の井別荘の中谷健太郎氏)が町の農協に資金を貸りて、ドイツのバーデンバーデンなどの温泉保養地に視察に行きました。
そこで学んだことを活かし、日本における温泉地の新しい形を実現させるためにゴルフ場やチェーンホテルなどの大手レジャー施設が入ってくるのを町ぐるみで拒み(バブルの時は大変だったようです)、地元の食材にこだわって早くから「地産地消」を推進しました。
また音楽祭や映画祭などの文化イベントの企画でアンテナの敏感な人たちを巻き込むことによって知名度も上げていき、由布院は成功しました。
それを踏襲した近県の黒川温泉も近年人気を博していますし、その一方で熱海や別府のような旧来型の温泉地が衰退したこともみなさんご存知でしょう。

 

ある学者の試算によると10年後には日本中に夕張市のような経済破綻する町がうじゃうじゃたくさん出てくるそうです。
実際日本中でJRの駅近くの商店街はいずこもシャッター街と化しています(地方が車依存の生活形態へと移行したことも大きな一因でしょうが)。

砂漠にすべて人工のラスベガスという町を作った、そのやり方をもともと風土というものを持っている町に押し付けようというのは乱暴でしかも、もう古いと思います。
いまあるものを活かして、さらにその特性を伸ばす町作りにシフトするべきなのです。
「脱・のっぺらぼうの町作り!」
そのためにみなさん、まずは町歩きをしましょう。
住んでいる人たちがその町の魅力を再発見することからすべては始まります。
自分が慣れ親しんだ町をゴーストタウンにしないために、まずはあなたの一歩から。

 

あれっ、コンサートに行き着かなかった(笑)。
もちろん良かったですよ。